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2006年5月24日 (水)

滅びゆく国家

Tachibana_1 『滅びゆく国家-日本はどこへ向かうのか-』

立花隆 日経BP社 06年/4月刊

日経BP社のサイトにおいて、2005/3/25から2006/2/16まで連載された「立花隆のメディア ソシオ-ポリティクス」を基にまとめられたもの。

目次は以下のとおり。

第1章 ライブドアショック―会社とは何か
第2章 天皇論―女性天皇・女系天皇の行方
第3章 靖国論・憲法論―なぜ国立追悼施設はできないのか
第4章 小泉改革の真実―その政治手法と日本の行く末
第5章 ポスト小泉の未来―キング・メーカーの野望
第6章 イラク問題―ブッシュ政権の欺瞞と日本の責任
第7章 メディア論―耐震偽装・NHK問題の本質

いつものように抜書きしてたら、きりがないので、焦点を絞って抜書きします。
私は反小泉なので、その辺を集中的に。

中国との戦争に関しては、日本人はあまりに過少な事実しか知らない。戦争をしていた期間が太平洋戦争より3倍以上も長く、戦争を展開した面積もずっと広く、従軍した兵もずっと多く、敵に与えた損害もずっと多いというのに、日本人は、特に若い世代の日本人はこの戦争についてほとんど知らない。ほんの数年前までの私自身がそうだったのだから、ほとんどの若い世代の日本人もそうだと思う。/戦争の時代をリアルタイムで同時代の出来事として体験しているはずの人々も、同時代の日本国内の報道が質量ともに、きわめて低レベルのものであったから、客観的歴史的事実をほとんど知らないという点では同じである。/リアルな歴史として知らないだけでなく、グロスなデータもほとんど知らない。太平洋戦争と原爆で日本人が殺されまくった歴史のほうは、相当知っている人でも、中国では日本軍が各地で中国人を殺しまくり、一千万人を超える犠牲者を出したというごく基礎的な事実すら知らない。/日本人は、中国との戦争に関して、歴史解釈、歴史認識に誤りがあるというより、それ以前の状態にある。歴史的な外形的な事実を知るためのごく基礎的なデータすらほとんどの人が持ちあわせていないのである。日本ではそのあたりの歴史的教育がスッポリ抜けていたためである。/だから、大半の人が中国の靖国問題へのこだわりが「理解できない人」になってしまっているのである。

靖国
小泉首相のように、ただ、それを「心の問題」として、国内的にも国際的にも、あまたいる反対者たちに対して「理解できません」の一言を投げつけるだけで、万事解決したつもりになってしまうのは、政治家として無策の一語につきる。結局、靖国問題の落とし所は、靖国以外の国立追悼施設を作るという以外にないだろう。
今年の8/15は、小泉首相はいったい靖国に行くのか、行かないのか。どうせ9月に引退する身なのだからと、あとは野となれ山となれとばかり参拝するのか。そして、安倍をはじめとするポスト小泉の候補たちはそのときどうするのか。
この段階(2/16)ではなんとも予測がつかないが、・・・山崎拓、福田康夫、加藤紘一、鳩山由紀夫、冬柴鉄三など党派を超えたメンバーが「国立追悼施設を考える会」に結集しており、その政治勢力は着々と伸びている。

(2005/4/22)
私は一時、小泉首相をなかなかの政治家と評価し、そう書いてもきた。しかし最近、これは歴代の政治家の中でも最低に近い部類ではないかと思いはじめている。/郵政民営化にしてもそうだ。なぜそれがいま必要なのか、さっぱりわからない。なぜいまそれにそれだけ政治エネルギーをそそぎこまなければならないのか、さっぱりわからない。政治でいちばん大切なのは、たくさんある政治課題に優先順位をつけることである。一国の政治課題はいつでも山積している。しかし、その解決に割けるリソースはいつもかぎられている。時間も、金も、エネルギーも。/小泉首相は首相などになるずっと前から、わけのわからない郵政民営化以外何も政策を持たない政治家といわれてきた。総理大臣になって、一応の改革をなしとげた後で郵政民営化を指して「いよいよ、これが改革の本丸」と叫んでいるわりには、相変わらず、それにどれだけの意味があるのか、どれだけの重要性があるのかさっぱり見えてこない。最近では、私はこの人は総理に向いていないと思いはじめた。これほど識見のない人には、早くやめてもらわないと日本は沈没してしまうのではないか。

日本の戦後の経済的成功を支えた国家体制=国家資本主義体制(1940年体制)の根幹部分は、世界最大の銀行たる郵貯などがかき集めた郵政マネーを、国家が中心となって公共事業に投資して回転させていくという行為それ自体によって日本経済の根幹を支えていくという、国家中心の資本主義体制だったわけだ。/日本の経済力をつぶそうと思ったら、この根幹部分をつぶすほかないと見抜いたアメリカのプレッシャーと、たまたま郵政省と郵政族に深い恨みを持った、ちょっと頭の弱いポピュリスト政治家(小泉首相のこと)の望みが一致してはじまったのが、小泉改革の4年間とその頂点としての郵政民営化大騒動だったということではないのか。

何年にもわたるゼロ金利政策によって、貯蓄者(国民全体)から、ゼロ金利でなければ得られたであろう所得が奪われ、その分、銀行に所得移転が行われてしまうという恐るべき国民全体からの富の収奪と、それによる銀行救済が行われてきた。/あの驚くほど巨額の銀行の不良債権処理も、その原資をたどれば、実はゼロ金利政策で国民全体にその負担がまわされていたことになるわけだ。これほど大きな仕掛けは、一般国民大衆の目には見えてこないから、怒っても当然の、ぶったくられる一方だった国民が誰も怒らないというこの不思議さ!/「改革には痛みをともないます」という掛け声をかければ、デフレ、ゼロ金利、リストラ、失業の増大という三重苦、四重苦を強いられている国民が、みんな「改革のために」と思って我慢してしまうというこの従順な国民たち!・・・/その上さらに輪をかけて、「財政改革が急務です。プライマリー・バランスを回復するためには、サラリーマンの負担を増やす必要があります」の掛け声がかけられて、増税がはかられ、「年金制度が破綻しそうなので、もっと受益者負担を」「健康保険制度が破綻しそうなので、もっと受益者負担を」と、国民負担が増大する一方で、世界有数の国民負担の重い国になりつつあるというのが、小泉改革の実態ではないのか。

小泉首相は、「入るを増やす」の努力を何もせず、結局のところ逃げに逃げてきただけなのだ。しかし、財政の現実は、もはやいかなる逃げも許さないところまできている。最大の問題は、年金だ。団塊の世代が引退の時期を迎えたことで、いまや年金会計の破綻状況はいかなる塗抹も許さないところまできている。/年金会計の政府支払部分は、すでに40兆円を突破しており、歳入の主要部分である国税収入(45兆5900億円)とほぼ等しいところまできてしまっているのだ。/いまの日本の財政構造を、一般会計と特別会計ひっくるめて、一言でいえば、国に入ってくる税金をすべて年金の支払いにまわしてしまい、残りの政策経費はすべて借金(国債)でまかなっているというに等しいことになっているのだ。このような無理なとりつくろいが長続きするわけがない。/このような待ったなしの異常事態に直面しているというのに、小泉首相はなおも人気取りのために逃げの姿勢に徹しつづけ、それでいて、見せかけだけは、「改革」の騎士のごとき風を装いつづけてきた。このような小泉首相の政治姿勢は、ズルを通りこして、ほとんど詐欺かペテンの域にまで達しているといっていいだろう。

小泉首相がやったことは、「改革のためには痛みに耐えることが必要です」と淡々と非情に言い放つことだけだった。/日本国民には、一種マゾヒスティックなストイシズムがあるのか、苦痛に耐えることに一種の美学のようなものを感じてしまう人が多いのか、小泉首相の「改革のためには、痛みに耐えることが必要です」の一言にやすやすと騙されてしまった。そして、小泉改革の夢を信じて(苦しみの向こうに喜びがあるにちがいないと思いこんだ)、それぞれの生活の中で、耐えられるかぎりの痛みに耐えてきたのである。といっても耐えられない人々が少なからずいたため、その間に、日本は先進国中最大の自殺大国になってしまった。/それでその結果がどうなったのかというと、・・・小泉首相は新たに「世界一の借金王」になってしまったのである。そして国民はそれに怒りもせず、小泉首相を許しているのである。/「世界一の借金王」とは、1998年から1年8ヶ月にわたり総理大臣を務めていた小渕恵三首相が、経済苦境から逃れようとして、一大バラまき経済刺激策を取った結果、84兆円もの国債を発行するはめに陥って、自嘲的に自分を表現したセリフだ。/しかし、このとき小渕内閣が発行した国債など、いまにして思うとかわいいものだ。その実に3倍以上もの国債を発行したのが、小泉首相なのである。小泉首相が首相をしてきたこの4年間に、小泉首相は財政赤字を540兆円から796兆円にふくれあがらせ、その間に発行した国債は250兆円にも及び、小渕時代の「世界一の借金王」の3倍を軽々と突破しているのである。/まことに小泉首相は「世界一の借金王」というしかない。小渕が、自分のことを「世界一の借金王」といったとき、そこには、自嘲の響きがあったが、小泉首相は、そんな認識もなく、いけしゃあしゃあとしているだけである。/小泉首相はいったい何を考えているのかと思うが、一方で、小泉首相はもしかしたら、この危機的状況を誰よりもよく認識しているのかもしれない。/それを認識しているからこそ、「あと一年で絶対にやめる」をきっぱり断言しつづけているのかもしれない。/一年以上つづけたら、大破綻が必至(いわゆる07年危機による破綻の到来)だし、それに対応しようと思ったら、小泉首相があれほど逃げて逃げて逃げまくってきた大増税を自分の手でやらなければならなくなることが必至だということを見こしているのではないか。/先の衆院選で小泉首相にバカ勝ちさせた国民は、いったい小泉首相の上にどんな幻影を見ていたのだろう。

3日に渡って抜書きしてみました。しかもかなり偏ったピックアップで。
嫌いなもんで、あの人。

評価:10点

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