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2009年7月 8日 (水)

ハチはなぜ大量死したのか

Photo 『ハチはなぜ大量死したのか』

ローワン・ジェイコブセン 文芸春秋 09年1月刊

科学読み物としてはそこそこ売れている。原題は「Fruitless Fall」、直訳すると「実りなき秋」。環境問題を扱った本として、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」はあまりにも有名。それを意識したタイトルであるがえらく意訳するもんだ。まあ、ハチのことを書いているし、結構インパクトある邦題だからこれはこれでいいかも。

北半球のミツバチが危ういらしいが、ハチのいろんな生態についてもとても興味深かった。

以下、抜書き。

・・・、ミツバチは摂氏15度以下では飛ぼうとしない。さらには、雨の日も飛ばない。朝も他の蜂に比べて比較的遅く、夕べも早々に引き上げる。リンゴ栽培の専門家である私の友人は、ミツバチは組合労働者だと言う。条件が折り合わないことがいくつかあると、その日の就業をやめてしまうから。

 
秋が殺風景な姿をさらすようになり、最後の花も姿を消すと、ミツバチのコロニーは幼虫を産み育てるのをやめ、巣の中央に身を寄せてかたまり、体を震わせ続ける。温かい中心部で守られているのは大切な女王だ。そして甘いものを食べ、体をくっつけ合って、厳しい日々を耐えしのぶ。発熱は、翅の筋肉を振動させることによって行う。そして凍死するようなことがないように、塊の内側と外側を常にローテーションし続ける。/この努力はしっかり実を結んでいる。外の気温がマイナス30度近くまで下がる北国の冬でも、ミツバチの塊の中心部は、蜂蜜パワーに駆動されて、アフリカ並みの摂氏35度前後を保つ。

 
・・・卵からかえったとたん、ミツバチ版の母乳である、たんぱく質豊富なゼリー(ローヤルゼリー)をふんだんに与えられる。これは、子育てに専従する育児蜂が花粉を消化して作る。三日月の形をした幼虫は迅速に成長する。その速さは、1日に2回、体重が倍になるほどで、6日目には、育房の隙間がほとんどなくなってしまう。

 
ミツバチは、餌と関連付けて学んだものなら、どんな匂いでも見つけ出す。・・・/地雷の探知は嫌な仕事だ。地雷に含まれる爆薬の匂いを嗅ぎつける仕事をよく押し付けられるのは犬だが、犬は訓練に時間がかかるし、広い地域をカバーすることもできないうえ、地雷に吹き飛ばされてしまうことも多い。だがミツバチは、順応性に優れた学習者で、餌に爆薬の副産物を少し混ぜるだけで、2日間のうちに学習を済ませてしまう。カバー範囲も犬よりずっと広く、決して爆死するようなことはない。/・・・実験では、ミツバチは97%の精度で地雷を発見し、見逃したのはただの1%だけだったという。これは、人間の地雷撤去作業員の精度と変わらない。

 
・・・雄蜂たちの群れは、・・・、ライバルを引き離し、素早い女王蜂を捕らえようと競う。ついに1匹が女王蜂に追いつく。一目ぼれだ。彼は飛びながら女王蜂の腹部を前脚で捕らえ、下腹部をすりよせて、男性器を彼女の中に差し込む。つかの間のあいだ、ふたりは愛に包まれて山の上を流れるように飛ぶ。だが、この関係はあっという間に冷めてしまう。/文字通り人生のクライマックスを迎えた瞬間に、雄蜂の下腹部に途方もない空圧が高まって爆発が起きるのだ。そして数百万の精子と切り取られた男性器を女王蜂の体に竜巻のような勢いで押し込んだあと、雄蜂は地面に落下して命を終える。・・・/けれども女王蜂は、まだ肩慣らしをしただけだ。他の雄蜂が追いかけてくると、もっとも早い数匹を選び、一度に一匹ずつ交尾して、体を離すたびに、雄蜂をデススパイラル飛行に追いやる。女王蜂がようやく交尾をやめるのは、数回の飛行で10匹から36匹におよぶ求婚者の貢物を手に入れたあとだ。/浮気者だと責めないでほしい。この飛行は、彼女が巣の外に出られる唯一のチャンスなのだから。・・・この数日間の朝の飛行が終われば、また巣に戻って、一生涯子供を産み続けなければならない。

 
蘭のほんとうにすごいところは、虫をだます手管が豊富なことだ。食べ物以外で虫をおびきよせるとしたら、他にどんな方法があるだろう?避難所の提供もそのひとつ。実際、蘭の中には、隠れ家を提供するものもある。香りもしかり。これは蘭にとっては得意中の得意だ。そして、もうひとつ、食べ物や飲み物に勝る究極の誘引策がある。/セックスだ。オフリス属の多くの蘭は、発情した雌の蜂やカリバチの擬態を芸術の域にまで高めている。このような蘭の下部の唇弁は、見かけも匂いも、そして感触さえも、柔毛で覆われた雌が誘惑している姿にそっくりだ。雄は急降下すると「雌」の上にまたがって、ことにはげむ。昆虫学者はこの行為を「擬似交接」と呼ぶ。パートナーに脈がないことを発見した蜂は、憤懣やるかたない思いで次々と蘭の花を訪れる。そして無駄な努力に疲れ果てた頃には、かなり効果的に蘭の集団を他家授粉してしまっている。

 
ハワイのカウアイ島。海上450メートルの断崖から一人の植物学者がぶらさがり、雄のブリグハミアの花から花粉を採取して、雌の花に移している。「先端にキャベツがついたボーリングのピン」のようなこの1.8メートルほどの多肉植物は、ハワイの絶壁にしか生えない。唯一の花粉媒介者だったスズメガが消えてしまったため、野生のブリグハミアはここ数十年間自力では繁殖が行えないままになっている。すでにラナイ島とマウイ島では絶滅し、カウアイ島に残る数も100本を切った。

 
メキシコ。バニラ農園の農民が、淡い緑色をしたバニラ蘭の柔らかい花弁を引き裂き、花粉を爪楊枝でかき出して柱頭に移している。受精した花柱は、成長してバニラの莢になる。1年に1度しか開花しないバニラの花には花粉を保護している蓋があるが、その蓋の開け方を知っているハリナシミツバチの「メリポナビー」は森林伐採のために消滅してしまった。ほかにこのトリックをマスターした授粉昆虫はいない。今日、世界中のバニラ蘭は、人間の手で受粉されている。

 
イチジクが頼りにしているのは、たった1種類の花粉媒介者、・・・イチジクコバチだ。イチジクコバチの人生のビッグイベントはすべてイチジクの中で生じる。・・・/イチジクの面白い特徴のひとつは、そのヘソにある。例の、太いほうの端にある楊枝であけたような穴だ。このヘソのなかには、・・・入り組んだ一連の壁がある。この迷宮の中を進めるほど小さくて意思が強い昆虫は、このごく小さなイチジクコバチしかいない。・・・/雌のイチジクコバチが地球上で唯一産卵する場所は、イチジクの実の内部だ。雌蜂はヘソを通ってイチジクの内部に入る。・・・無事内部に到着すると、雌花に卵を産みつける。・・・/産卵を終えると、イチジクコバチは死んでしまう。数週間後、イチジクの実が熟すにつれて、卵が羽化してくる。雄蜂が生まれるのは雌より一日早い。雄蜂はケラのように醜悪だ。雌より小さく、翅もなく、ほとんど目が見えず、体の半分近くにもおよぶ巨大なペニスと異常に大きくて頑丈な顎がある。この2つの体の特徴は、彼らが世に生を受けた目的をよく表している。羽化した瞬間から、雄蜂は交尾を始める。まだ羽化していない雌蜂を保護している殻に顎で穴をうがち、ペニスを差し込んで授精する。これが終わったら、最後の仕事が残っている。イチジクが熟すとヘソが閉じ、出入りは不可能になる。そこで、雄蜂は、・・・ヘソの周囲に結集し、直径6ミリほどの脱出トンネルを切り拓く。雄蜂には、イチジクの外の世界で暮らすすべも、そうしたいという気持ちもない。雄蜂があごを使ってトンネルを切り拓くのは、純粋に雌蜂への奉仕だ。トンネルが完成すると、雄蜂はイチジクの内部に戻って命を終える。雌蜂はトンネルの中を腹ばいになって進み、その過程で腹部を雄花の上で引きずって、自分でも気づかないうちに花粉を体につけるわけだ。雌蜂は自由な外の世界に這い出し、今度は自分の卵を産むために、まだ受精されていないイチジクを求めて飛び去ってゆく。

 
ハチミツは、地球上に存在するもっとも強力な抗菌物質のひとつで、細菌や真菌などの微生物を殺す力を持っているのだ。ハチミツが備えている武器はひとつではない。まず、ほかの糖類とおなじようにハチミツには吸湿性があるため、細菌群の上にハチミツを塗ると、ハチミツが細菌の水分を吸い取る。その結果、細菌は縮んで死んでしまう。ハチミツの脱水作用から逃れえた細菌も、ハチミツの酸にやられるか、あるいは水分を吸収するときに生成される過酸化水素にやられてしまう。・・・/・・・ご存知のように、抗生物質はもはや、必ずしも効果のある薬ではなくなってきている。西欧諸国の病院では、抗生物質が効かない感染症が猛威をふるって年間数万人も殺しているし、アフリカやその他の発展途上国でも流行病を引き起こしている。そんな中、ハチミツはこのような感染症の多くに効果を発揮するだけでなく、入手の難しい抗生物質などよりはるかに安く、手に入りやすい。だから、いまふたたび、創傷被覆剤としてハチミツを使う医師たちが増えてきている。

 
さて、では、アメリカやヨーロッパの状況はわかったけれど、日本のミツバチは大丈夫なのだろうか?日本にいるミツバチも大量失踪したり、大量死したりしていないのだろうか?・・・/・・・現在のところCCD(蜂群崩壊症候群)に苦しむ北半球のセイヨウミツバチのなかにあって日本のセイヨウミツバチはそれほど大きく影響をうけていないようにみえる。

 
ニホンミツバチはオオスズメバチに襲われると、巣から出て反撃するということをせず、巣門近くに働き蜂が集まる。巣のなかにオオスズメバチがはいるやいなや、いっせいに働き蜂が飛び掛かり、何十匹もの体で蜂の球をつくりそのなかにオオスズメバチを閉じ込めてしまうのだ。蜂球の働き蜂は飛翔筋による発熱で蜂球内の温度を一気に48度まで上昇させ、20~30分加熱してオオスズメバチを蒸し殺してしまうのである。

 
池田山カップ、今年は協賛がつかなかったけど、ミツバチ大丈夫かなあ。

 
評価:8点

 

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