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2010年6月21日 (月)

技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか

Photo 『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか 
       -画期的な新製品が惨敗する理由―』

 妹尾堅一郎 ダイヤモンド社 09年7月刊

うちの本部長が管理職に推薦した本。私は管理職ではないが、この種の本はそういう推薦でもない限り手に取らないので読んでみた。2400円もした。。

ひとことでまとめると、インテルになりなさい、アップルになりなさい、ということ。

もうちょっと詳しく言うと、
インテル・インサイド型:基幹部品主導で完成品を従属させる
アップル・アウトサイド型:完成品イメージ主導で部品を従属させる

もう少し具体的に紹介すると、以下の「三位一体」戦略が繰り返し書かれていた。
①研究開発:製品特性(アーキテクチャー)に沿った急所技術の開発
②事業戦略:「市場の拡大」と「収益確保」を同時達成するビジネスモデルの構築
③知財戦略:独自技術の権利化と秘匿化、公開と条件付きライセンス、標準化オープン等を使い分ける知財マネジメントの展開

以下、抜書き。#は私のコメント。

・まず、あとがきより。
私は、本書を一種の啓発書として書きました。教科書としてではありません。必ずしも、学術的に定説になったことを体系的に整理したわけではないからです。・・・新たな学術書を書く前に、啓発書として内容を世に問うという側面を持ちます。なぜそうしたのか。それは、一刻でも早く、この「技術で勝り、事業で負ける日本」について、あるいは「科学技術大国ではあるが、科学技術立国できていない日本」について、企業の事業関係者、知財関係者、また官庁の政策担当者の皆さんと共に、真剣に考えたいからに他なりません。その意味では、本書を鵜呑みにするのでもなく、また批判対象としてでもなく、これを起点にして議論をしていただきたいのです。

#読書とは本来そうあるべきだと常々思っている。鵜呑みにしてはいけない。考えるきっかけになればいい。

 
・グローバル市場で大量普及が始まると、我が国は例外なく市場撤退への道を歩む―イノベーションの成果/知財が競争力に寄与できていない― DRAMメモリー、液晶パネル、DVDプレイヤー、カーナビ、太陽光発電セルのシェアの経時変化グラフ:すべて2007年には20%以下に、液晶パネルは1995年100%から2005年10%へ、カーナビは2003年100%からの2007年20%へ低下

#ちょっとひどい。

 
・最近のイノベーション競争を先導しているIBMのサミュエル・パルミサーノ会長がプレゼンテーションのときに使う資料には、「ゲームのルールを変えた者だけが勝つ」と書いてあります。これはまさに本音であり、かつ最も象徴的なエピソードではないでしょうか。

#ゲームのルールが変わった時は要注意、そういう意志がはたらいている、とみなすべきやね。

 
・真空管の研究は、半導体を導きません。固定有線電話の技術をいくら磨いても、携帯電話の技術にはなりません。新しい技術は外からやってくるのです。/これは製造業に限らず、サービス業も同様です。郵便小包の生産性を上げればクロネコヤマトが生まれたでしょうか?街の雑貨屋の業務を徹底的に効率化したらセブン‐イレブンが生まれたでしょうか?喫茶店の生産性を上げたらスターバックスになるでしょうか?いずれの答えもNOのはずです。/新しい技術、新しいモデルは常に外からやってきます。そのモデルにやられたくなければ、自ら変身するしかありません。生物学者チャールズ・ダーウィンが言ったと伝わるように、「強い者が勝つのではなく、常に変わり続けるものが生き残る」のです。

#上の抜書きと併せると、ルールが変わった時、自ら変身するしかない、ということね。

 
・彼ら(米国)は留学生に手厚くすると見返りがあることを、経験から学んでいました。中国とインドで大活躍している人の多くは米国留学帰りです。優秀な中国人やインド人には米国内で適切なポストを得る機会を与えると共に、本国に戻った者たちともツーカーで話ができるようになっているわけです。/一方、日本は、・・・日本に来る留学生は一部では欧米に行けなかったレベルの者だとか、とにかくアルバイトをしたくてという学生が多いとさえ言われてしまっています。実態として優秀な学生も多いのですが、しかし日本に慣れた者が日本の産業と共に国際的に活躍するということは極めてまれだと言わざるをえません。そして何より悲しいのは、かなりの留学生が日本嫌いになって帰国してしまうと聞くことです。

 
・標準はいったん決まってしまうと、その後の研究開発から知財マネジメント、事業戦略まで、多大な影響を与えてしまいます。そこで、日本も国際標準化を先導することが必要なのですが、技術大国の割には国際標準をリードした例は多くないと指摘されています。JPEGという画像ファイルの技術仕様は日本が先導して決めた数少ない国際標準の例です。

 
・科学者は急所を探すという発想をしがちですが、実務家の場合は、むしろ急所・要所をつくるという発想をしたほうが良いように思えます。

#簡単な表現だけど、難しい。そして大事なことだと思う。

 
・皆さんよくご存じの<コカ・コーラ>。あの味がどのようにつくられるのか?実はこの製法に関しては、いまだ特許がとられていません。/1831年に薬剤師のジョン・S・ペンバートン博士が開発して以来、その処方は謎なのです。専門の研究者が原液をいくら調べても、解析ができないと聞きます。もちろん、何の成分がどのくらい入っているかは分かるのですが、何をどう混ぜどのようにつくればあの味に仕立てられるのか?それはもう想像の世界でしかないようです。/もし仮に特許をとろうとすれば、その技術を明るみに出さなければなりません。しかも特許には、通常20年という期限があります。その期限が切れたら、誰でも同様のコーラをつくってもかまわないことになります。そこで<コカ・コーラ>は、あの味の出し方について特許をとらずにノウハウとして秘匿しているのです。

#なるほど、どうりでペプシはどうもコカコーラと違うわけだ。タカナミには悪いけど。

 
・例えば、A社がある技術の特許を持っていたとします。きちんと特許庁へ出願して、それが認められたものです。あるときB社が新製品を出したので、それを調べたら明らかにA社の特許技術と同様の技術を使っていることが判明しました。そこでA社は、B社に「権利侵害ではないか」と警告状を出します。B社の反応が悪いときは、訴訟を起こします。この場合、訴えられたB社はどうするか?通常、3つのパターンがありえます。
一つ目は、「この技術は、A社の特許技術と違う」と主張することです。この場合、専門家の判断を仰いで、特許の出願書類の解釈を巡って論争が続くことになります。
二つ目は、「うわっ、いけない。ごめんなさい。うっかり同じ技術を使っていました。ご勘弁ください。今までの分の賠償金をお支払いしますし、これからの分は適切なライセンス料を払いますので、どうぞ今後も使わせてください」というものです。これに対して、A社がそれを受け入れるか、あるいは「困るなぁ、賠償金は受け取るけど、もうダメだよ、二度と使うなよ」とするかは、そのときの状況いかんです。
三つ目は、「確かに我が社の技術はA社と同様の技術ではあるが、この技術は別に特許に足るものではない。そもそもこの技術が特許になっていること自体がおかしい」と主張することです。特許の場合は、こういった主張ができるのです。特許が無効であると特許庁に対し「無効審判」と訴えることになります。さらに裁判所に侵害訴訟を起こされたとすれば、特許権の無効理由として「無効の抗弁」を行うことができるのです。この結果、B社が侵害したか否かという論点と、A社の特許がそもそも適切ではなかったのではないかという論点と、両面で判断がなされることになります。

#研究所にいるときは特許は出願するだけだったが、事業部に来てからこの種のことが身近に。。

 
・新幹線の先頭車両の鼻部分の形状。これも流体力学の粋を集めた技術の塊ですが、それも特許と意匠権の両方で押さえています。意匠権は、技術を保護するのに、特許権とタッグを組んで相乗効果をもたらすものなのです。

#これも研究所では関係なかった。やっぱり研究所にいるだけではいろいろ足りないね。

 
・かつて、中国でオートバイの模倣品対策に手を焼いていたホンダは、最も高度な技術力を持っていた模倣品メーカーを外注先にしてしまいました。一石二鳥。これなどは、問題の解決ではなく問題を解消する方法でしょう。

 
・知財マネジメントは、知的創造サイクル観から見たときは「知的財産を生み・育て、それを権利化あるいは秘匿した上で、それらを活用するという一連のプロセスをマネジメントすること」でした。これはどうしても後追いです。しかし、事業創造サイクル観から見ると、「自社の特徴を活かした事業を創出・継続できるように、自社・他社の知的財産(権)群を構成し、それを調達する一連のプロセスをマネジメントすること」とも言えるでしょう。

 
・パソコン市場はもっと明快です。パソコン市場は成熟?とんでもない。先進国だけがパソコン市場ではないのです。NIEs/BRICs、さらには発展途上国を見てください。数十億台のパソコン需要が潜在的に存在するのです。そこへの普及を考える発想を日本企業はあきらめてしまったように見えます。/日本はナショナルイノベーションが得意です。しかし、グローバルイノベーションにはつながらない。グローバルなマーケットを見ながらイノベーションを考える人々と、国内市場だけでローカルイノベーションをやれば良いと思いつつ仕方なくグローバルに出て行く人々では差があります。日本はやっぱり「内弁慶」にどどまってしまうのでしょうか?/新興国を市場として真剣に考えている経営者はどのくらいいるのでしょうか?極めて少ないように見えます。

#はたしてうちの会社は?仕方なくグローバルに出て行く、、耳が痛い上層部が多いのでは?

 
・グーグルの検索サービスの裏側では相当数の先端的な数学モデルが動いていると言われています。しかし、数学的なサイエンスの進展があったからグーグルサービスのビジネスモデルができたのでしょうか?そうではないはずです。ネット検索に関する新しいコンセプトを創ったので、それを可能にする数式モデルを開発したのです。普通はサイエンスからテクノロジーが生まれるのですが、そうではなくて、テクノロジーからサイエンスにさかのぼる発展というものもあります。科学技術もそういった時代に入ってきたのです。

#とはいえ、「はやぶさ」みたいなサイエンスはとってもいい。

 
評価:8点

 

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