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2014年8月11日 (月)

市場と権力

Photo『市場と権力

 ―「改革」に憑かれた経済学者の肖像―』

 佐々木実 講談社 2013年4月刊

大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
新潮ドキュメント賞受賞。

著者は私の高校時代の同級生。
剣道部だった佐々木、こんな本を書いて立派な賞を獲って、えらいなぁ。。


サブタイトルの「改革に憑かれた経済学者」とは、竹中平蔵のこと。この本を読めばわかるが、かなりの悪人だ。

数々の悪事を紹介したいが、いつものように抜書きしてるときりがないので、興味のある方は買って読んでください。(宣伝)


以下、抜書き。#は私のコメント

○地方自治体は市民税や都道府県税といった地方税を、1月1日時点で住民登録している住民から徴収する。したがって、1月1日時点でどこにも住民登録されていなければ、住民税は支払わなくて済む。/竹中はここに目をつけ、住民登録を抹消しては再登録する操作を繰り返した。1月1日時点で住民登録が抹消されていれば、住民税を払わなくて済むからである。/小泉内閣の閣僚になってから、住民税不払いが脱税にあたるのではないかと国会でも追及された。アメリカでも生活していたから脱税とはいえないけれども、しかし、住民税回避のために住民登録の抹消と再登録を繰り返す手法はきわめて異例だ。/じつは竹中自身、これを節税の秘策として吹聴していた。

#せこい、せこすぎる。


○自らの手は汚さず、監査法人を指嗾して銀行を破綻させ、公的資金投入を実現する―その戦略を実現させた手際はほぼ完璧だった。

#りそな銀行破綻のこと。

○りそな銀行の破綻は、誰もがその解釈に悩んだ。政府が会計的な操作によって意図的に潰したことは明白だったけれども、一方で、政府が2兆円もの巨額支援をするのだという。あえて「金融危機」と招来しておいて、その危機を鎮圧するために税金を湯水のごとくつぎ込む意味はどこにあるのだろう。その意図をもっとも早く正確に汲み取ったのは、東京株式市場だった。/通常であれば、銀行が倒産すれば、銀行の株も紙くずとなる。ところが、金融担当大臣の竹中は、りそな銀行の株主責任を問わない処理方法を採用した。株主からすれば、「りそな破綻」ではなく、「りそな救済」だったのである。ペナルティーを科されず、政府から2兆円もの資金支援を受けることができたからだ。/竹中大臣率いる金融庁の不良債権処理の本質を理解した海外投資家たちは、いっせいに東京マーケットに資金を投入してきた。/「金融危機対応会議からしばらくして5月下旬から、株価は明らかに上昇に転じた。その後、株価は3年で2.1倍に上昇、銀行株は3.6倍に上昇することになる。公的資金の注入が市場のマインドを変えたことは明らかだった」/「大臣日誌」で、竹中は自画自賛している。たしかにマーケットは「銀行救済」を買い材料と判断した。竹中は海外でも高い評価を受けるようになった。夏に訪米した際、まるで凱旋将軍のようにアメリカ政府高官や金融関係者から歓待されている。

#自分の成果のために銀行を1つ潰したということ。ひどい。


○「郵政民営化は内閣の最重要課題なんだから遠慮する必要はまったくない。予算は私がとってくる」―竹中は政府内の会議で官僚たちをそう叱咤した。政府が法案も準備できていない時期から政府広報を大々的に打つのはきわめて異例だが、国会論戦が始まる前にすべての媒体に「郵政民営化」の政府広報が流されていた。/さながらメディアへの補助金交付のような大盤振る舞いだった。法案審議の開始より前のおもな広報は、政府資料などによると以下のとおりである。/新聞には、2004年12月に1回、全国紙3紙に総額約2500万円を費やして広告記事を掲載。さらに翌年1月、全国紙5紙に全面広告を打ち、総額約1億700万円を支払っている。掲載料は「読売新聞」約3400万円(請け負い業者は、読売エージェンシー)、「朝日新聞」約2900万円(同、電通)、「毎日新聞」約1800万円(同、東急エージェンシー)、「日本経済新聞」約1400万円(同、博報堂)、「産経新聞」が約1000万円(同、東急エージェンシー)となっている。/雑誌では2005年1月に発売された月刊誌「文藝春秋」と「日経ビジネス」にそれぞれ約500万円、ほかに週刊誌や月刊誌など33誌にあわせて約5000万円をかけ広報している。・・・

#これは竹中の悪事とは関係なく、広告料に興味があったのでメモっておいた。うちの会社の広告宣伝費もすごい金額なんだろう。ちょっと開発費に回してほしいところ。。


○不良債権処理なかんずく「りそな銀行破綻」に貢献した木村剛は、まるで論功行賞のように、新しい銀行を手に入れた。銀行免許を付与した金融担当大臣が竹中である。/日本振興銀行の経営者となった木村は数々の問題を引き起こしながら、ついに2010年9月10日、日本振興銀行を破綻させた。そして、日本の金融史上初めて、「ペイオフ」が適用された。預金者が預けていた資金が失われる事態となったのである。/・・・/2012年3月16日、東京地裁は銀行法違反の罪で、木村剛に懲役1年執行猶予3年の判決を言い渡した。木村は控訴せず、有罪が確定した。/一方、日本振興銀行破綻の経営責任を追及する整理回収機構は、木村ら旧経営陣を相手取って損害賠償訴訟を起こした。整理回収機構の調査によって、銀行が破綻するわずか6ヶ月前、木村が自ら保有していた日本振興銀行の株式を1株33万5000円という法外な高値で売り抜けていた事実が明らかになった。このときの株売却で、木村は総額3億1825万円を手にしている。/木村の株を買い取ったのは、中小企業保証機構という会社だった。木村は、銀行から引き出した資金をあたかも循環させるような奇妙な企業ネットワークを構築していたのだが、同社はそのネットワークの中核企業だった。/中小企業保証機構は日本振興銀行からの融資を元手に、木村の株を買い取った、と整理回収機構は見ている。要するに、木村が手にした3億1825万円は、破綻寸前の日本振興銀行から引き出したカネだったのである。/じつは木村は、警視庁に逮捕されたあと急いで自分の財産を保全する措置を講じていた。刑事裁判の弁護を依頼した○○弁護士の口座に、資金を移動させたのだ。弁護士の口座なら差し押さえられる心配はないからだ。バンク・オブ・シンガポールの木村名義の口座などから○○弁護士の口座に移された資金は総額で3億円を超えていた。/木村は、先に述べた以外にも日本振興銀行の株を売却していて、関係者によると、銀行株の売却で得た資金は総額で10億円を下らないという。日本振興銀行の破綻で3000人を超える人々が預金を失うなか、木村が守り抜いたのは自分自身の財産だけだったのである。「金融維新」を唱えた革命家の、これが真実の姿だった。

#この木村剛の著書「投資戦略の発想法」を12年前に読み、とても感銘した。が、悪人だったのね。そのときの抜書きは以下のとおり。

○いまの子供たちは本当に大変だと思います。/10年前に現在の自分が置かれている環境を予測できたかどうか、考えてみてください。ちなみにわたしはできませんでした。次に、10年前に現在の自分の会社が置かれている状況を予測できたかどうか、考えてみてください。わたしはこれもできませんでした。/そして、将来を予測することは、これからもっと困難になるだろうと感じています。世の中が変化するスピードが速すぎるからです。変化のスピードが加速度を増している感じすらします。/将来を予測することは、本当にむずかしいことなのです。/いまの子供たちが成人する10年後はどうなっているでしょう。わたしには想像もつきません。少なくとも言えることは、多くの人が抱いている予測は外れるだろうということです。予測というものは、当たること自体めずらしいことであり、世の中の変化のスピードが上がれば、ますます当たらなくなると思われます。/そういう意味で、これまで常識化していた、いわゆる「成功の方程式」というもの はなくなると思います。いわゆる「エリートコース」というものの定義もむずかしく なるでしょう。これまでの日本では、一流大学に合格して大会社に入ることが最も確 実な「成功の方程式」だったのですが、その方程式をそのままなぞってきた人々が、 成功の証であった一流企業を次々と辞めています。または、リストラで辞めさせられています。/それでも、「一流大学に入るには、有名な進学校がいい」「高校受験のためにはいい中学校がいい」「それには、小学校がよくなければ」「いやいや幼稚園からだ」などと、ナンセンス極まりない競争があちこちで繰り広げられています。/本当にいまの子供たちはかわいそうです。一流大学に入ったところで成功は約束されないのに、それに向かって無駄な努力をさせられているのですから。/一流企業にうまく就職できたとしても、現在一流の会社が10年後にも一流の会社であり続ける保証はまったくないのです。ましてや10年後の一流企業に就職した子供たちが、その30年後にその会社をハッピーリタイアメントできるかなんてことは誰もわからない。定年までいられるかなど誰にもわからないのです。途中でクビになるかもしれない。ひょっとすると、20年後には、学歴や一流企業への就職を社会的成功と関連付ける考え方自体がナンセンスになっているかもしれません。/世の中にはまだまだ根強い学歴信仰があるようですが、これからの子供たちの場合は、高卒で社会に出て自分の顔を売って人的ネットワークを作ったほうが人生は豊かになるかもしれません。現状を前提とする限り、大学で学ぶことなどしょせん程度がしれています。4年間のモラトリアムを大学で浪費するよりも、社会がどう変化しようと自力で食べていけるような逞しさを若いうちから仕事を通じたオン・ザ・ジョブ・トレーニングで身につけたほうがよいのかもしれない-わたしはそんな感じさえ持っています。
 ・・・
 自分の30年後を予測してみてください。/いまの会社にまだいるでしょうか。どういう肩書でしょうか。給与水準はどうなっているでしょうか。ボーナスはいくらぐらい出るでしょうか。退職金制度はどうなっているでしょう。わが身にあてはめてみると、予測することがいかにむずかしいかを実感されると思います。/そこで、質問です。/「30年の住宅ローンを組むということは、今後30年間の生活が、その支払いに縛られるということですが、その間十分な所得を得るという自信はありますか」と問われたら、はっきりと答えられるでしょうか。/将来は予測できません。/将来何が起きるかわからない…。/これは大きなリスクです。このリスクほど大きいものはありません。/日本企業のリストラはこれからますます本格化します。日本という国自体、乗り越えねばならない試練がまだまだ山積みになっています。/何が起こるかわかりません。誰にもわからないのです。/自分と家族の生活を会社が温かく守ってくれる時代はもう終焉しました。将来何が起きるかわからないときは、よけいな負担を極力減らしておかなければなりません。危機に柔軟に対応できるだけのフットワークの軽さを確保しておかなくてはならないのです。住宅ローンを抱えているとすれば、返済額を固定し金利変動リスクを背負い込まないようにしておくべきでしょう。
 ・・・(略:政府も会社もあなたを守ってくれない、という記述)
 いまのうちから自分と自分の家族を守って生き残る方法を考えるべきです。自分と自分の家族を守る-それが投資戦略の中核になければなりません。そのために投資をするのです。/人生は意外に長い。死ぬまでの期間を家族とともに豊かに楽しく暮らすためには、財政的な裏づけが絶対に必要です。将来に向けて、何が起きても生活に困らないよう、必要な財産形成を計画的に着実に行うべきなのです。

#悪人木村剛ではあるが、いいことは言っていた。


○小泉政権の閣僚時代、ささいではあるけれど象徴的な出来事が起こっている。竹中が、他人の著作の内容を自分の「思い出話」にすり替えて自著で紹介してしまったのである。/経済財政政策担当大臣と金融担当大臣を兼務していた2003年1月、竹中は幻冬舎から「あしたの経済学 改革は必ず日本を再生させる」という本を出版した。そのなかの一節である。/<子どものころ、親からいわれていまも記憶に残っていることがあります。それは「人間は「稼ぎ」と「つとめ」ができて初めて一人前の大人だ」というものです>/明らかに経済評論家の寺島実郎の著書の内容から捏造された「記憶」だった。寺島は、99年に出版した「団塊の世代 わが責任と使命」(PHP研究所)でこんな文章を書いている。/<世界の当たり前の常識だが、古今東西のいかなる社会共同体においても、一人前の大人とはカセギ(経済的自立)とツトメ(共同体維持のための公的貢献)のできる人のことである>/当時、竹中は書評で寺島のまさにこの文章を取り上げて、「示唆に富む」と称賛していた。・・・/現職閣僚だった竹中は、いたく感心した寺島の意見を自分の意見として著書に取り込むために、「子どものころに親から聞かされた」という話をでっちあげてしまったのである。/笑い話のような逸話だが、竹中平蔵という「知識人」の特質を鮮やかに示すエピソードである。本書で触れた経済学者としての処女作をめぐるトラブルもこうした特質に起因していたといっていい。逆説めくけれども、彼の強みは融通無碍としかいいようがないこのような言論に由来している。言論の基本的ルールを逸脱しているがゆえに、言論戦に敗れることがないのである。

#他人のものを平然と自分のものとして取り込むという「基本的ルールを逸脱している」スタイルは、最近にも大物がいた、小保方だ。


一人でも多くの人に読んでもらって、竹中平蔵という悪人を政治の世界から追い出すことにつながれば、と思う。


評価:9点

 

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